ヨガでは、呼吸を大切にする、ということを耳にしたことがあるのではないでしょうか?ヨガにはたくさんの呼吸法がありますが、その目的を理解し、状況に合わせ使い分けることで、たくさんの良い効果を感じることができます。
本記事では、ヨガの呼吸法とはなにか、初心者の方でも取りくみやすい呼吸法とその効果、ヨガの呼吸法の具体的なやり方をご紹介します。
ヨガの呼吸法とは
ヨガの呼吸法は、「プラーナヤーマ」とも呼ばれ、ヨガ本来のゴールである、「心を静め、自分の内側にある本質的な幸福に気がつくこと」を達成するための手順、「ヨガ八枝則」の4番目に記載されています。
呼吸法といっても、意識するのは呼吸だけではなく、体内を流れる「気」をコントロールすることも必要なため、プラーナヤーマ=調気法※と呼ばれることもあります。
※本記事では、「呼吸法」で記載を統一します。
ヨガ八枝則
- ヤマ(日常生活で避けるべきこと)
- ニヤマ(日常生活ですべきこと)
- アーサナ(ヨガの座法)
- プラーナヤーマ(ヨガの呼吸法、調気法)★
- プラチャハーラ(感覚の統制)
- ダーラナ(集中)
- ディアナ(瞑想)
- サマディ(悟り)
ヨガの呼吸法の目的は?
ヨガの呼吸法の目的は、呼吸を通し、体内を流れる「気」をコントロールすることです。「気」は、生命エネルギーともいわれますが、呼吸を止めると人は生きていけないように、呼吸と生命エネルギーは、密接に関係しています。
また、人の心と身体の状態は日々変わります。様々な呼吸法をうまく使い分け、その時、その人に必要な場所を生命エネルギーで満たすことで、心、身体、意識が安定し、自分の内側に集中する準備が整っていきます。
ヨガの呼吸法の種類
ヨガにはたくさんの呼吸法があり、ヨガをする目的、その人の状態、環境に応じて適切に選択することで、心身を理想の状態へと導くことができます。ここでは、ヨガのレッスンによく登場する、初心者の方でも取り組みやすい呼吸法を、3つご紹介します。
腹式呼吸
腹式呼吸は、肺の下にあるドーム型の筋肉、「横隔膜」を大きく使う呼吸法です。おへそをかこむようにおなかに両手をそえ、息を吸った時に、おなかのやわらかなふくらみを感じます。そして、息を吐くときには、おへそが背中側に引き寄せられていくのを感じましょう。
おなかの底からの深い呼吸で、リラックス効果が高いのが特徴です。うまくできないときは、ひざを立て仰向けになると、おなかの動きを感じやすくなります。
胸式呼吸
胸式呼吸は、ろっ骨の筋肉、「肋間筋」を強く使う呼吸法です。下腹部・会陰部を引きしめて呼吸するため、息を吸ったときに、腹式呼吸ほどおなかがふくらまず、ろっ骨が広がるように膨らみます。
身体の前側だけでなく、脇腹、背中にも空気を入れ込むことを意識すると、深い胸式呼吸が上手にできるようになるでしょう。
完全呼吸
完全呼吸は、腹式呼吸から胸式呼吸、更には鎖骨まで意識して、肺の最上部まで空気を入れる「鎖骨呼吸」を組みわせた呼吸法です。おなかから胸、鎖骨へと、身体の下部から上部に向かいエネルギーを流し込むように息を吸い、吐くときにも、おなかの下から上に向かって、細く長く吐き切ります。
慣れないうちは難しさを感じるかもしれませんが、一呼吸ずつていねいに呼吸してみましょう。
ヨガの呼吸法の効果
では、ご紹介した3つの呼吸法、それぞれの効果をご紹介します。
腹式呼吸で心を安定させる
深い呼吸、特におなかを緩める腹式呼吸は、リラックス時に活発になる副交感神経を優位にするため、心が安定します。忙しい現代人は、心身を緊張させる交感神経が優位になる時間が長く、自律神経のバランスが崩れやすいといわれています。
強いストレスを感じたときや、興奮や怒りの感情がなかなかおさまらないときは、ゆっくりと腹式呼吸をしてみましょう。自律神経のバランスが整い、心の安定を感じることができます。
胸式呼吸で身体を安定させる
下腹を引き締めた状態でおこなう胸式呼吸は、体幹を強く保ち、身体を安定させる効果があります。また、胸式呼吸は交感神経を優位にするため、集中力も高めてくれます。
ヨガのレッスンで、立位やバランスのポーズが多いときは、胸式呼吸を試してみてください。身体が安定し、集中できるため、ポーズの安定感を感じることができるでしょう。
完全呼吸で集中力UP
ヨガでは、普段しないような深い呼吸を通します。人は、1日2~3万回呼吸をしますが、脳が必要とする酸素の量は、全体の20%にも及びます。忙しい現代人は、呼吸が浅くなりがちで、酸素不足の脳では、集中力を継続することはできません。
ヨガの完全呼吸は、短時間でたっぷりと新鮮な酸素を脳にいきわたらせることができるため、集中力がグッとアップします。
ヨガの呼吸法のやり方
では、ヨガの呼吸法のやり方を、具体的にご紹介します。
安定して座る
まずは安定して座ります。安定する条件は2つ、①無理や我慢をしない座り方、②背筋が伸びることです。ヨガと聞くと安楽座や蓮華座のイメージがありますが、心地よさを感じなかったり、背中が丸くなる場合は、安楽座や蓮華座で座る必要は全くありません。
ヨガブロックや、椅子に座ることで背筋が伸びるのであれば、そちらの方が快適に呼吸ができるはずです。「ヨガは安楽座でないと!」というような固定観念にとらわれず、自分の安定する姿勢を探しましょう。
リラックスする
安定して座ったら、次はリラックスすることです。下半身はどっしりと安定させ、上半身はふんわり力を抜きましょう。目線を正面に向け、あごは引きすぎず、上げすぎず、床と平行に保ちます。
お顔まわりも忘れずに、奥歯のかみしめをほどき、ほほの力も抜きましょう。鼻や目の奥に力が入っていないか、眉間にしわがよっていないかも意識して。
呼吸に集中する
リラックスができたら、あとはひたすら呼吸に集中します。不安でなければ、目を閉じるか、半眼で空中の一点を見つめ、外から入る情報を減らしましょう。苦しくなければ鼻呼吸に切り替えて、自分の内側の感覚を感じます。まずは腹式呼吸から始めましょう。リラックスして、呼吸と共におなかのやわらかな動きを感じて。
次に胸式呼吸。下腹・会陰部を引き締め、ろっ骨を前・横・後ろ全方向に開閉するように呼吸します。最後に、鎖骨の裏側まで意識して呼吸をとおし、完全呼吸へとつなげていきます。呼吸を深めるポイントは、息を細く長く吐き切ることです。苦しさがなければ、吸う呼吸と吐く呼吸の間に、2〜3秒止める時間があっても、呼吸の余韻を感じることができるでしょう。
まとめ
日々無意識にくりかえしている呼吸ですが、そのなかに少しだけ意識的なヨガの呼吸法を取り入れることで、心と身体は安定し、集中力も増していきます。呼吸は、最も手軽な健康法としても注目を集めていますが、ヨガから呼吸を深めることで、自分を見つめる時間にもなり、心と身体が元気を取り戻していくでしょう。
東京都を中心に活動するIHTA認定ヨガインストラクター。会社員としての経験を持ち、自身の健康を意識することからヨガを始める。身体だけでなく、心も健康にするヨガの魅力を知り、この魅力を広く伝えたいという思いからヨガインストラクターに転身。マインドを明るくするような朝ヨガ・リフレッシュ効果の高いフロー感のあるヨガを得意とする。