筋肉の柔軟性を高め、身体を柔らかくするストレッチは、ヨガの動きと良く似ていますよね。しかし、ヨガとストレッチ、その違いを正しく理解している人は、少ないのではないでしょうか?
本記事では、ヨガとストレッチの違いとは何か、どのような時に、どちらをやればより効果的なのかを、詳しくご紹介します。
ヨガとストレッチの違いとは?
ストレッチとは、ヨガのポーズをベースに生み出された、筋パフォーマンスを向上するための筋肉調整法のことを指します。つまり、ヨガの一部をクローズアップし、特定の筋肉に対して、効率よく弛緩させるのがストレッチということです。
また、ヨガは紀元前2500年頃を起源としているのに対し、ストレッチの歴史は新しく、1960年頃にアメリカでの流行を発端としています。現代人の体の悩みに合わせて、生み出されたストレッチは、身体の柔軟性を向上する点に特化した構成になっていますが、その元となるヨガは、身体的な柔軟性の向上に限らず、その効果や目的に深さを持ち合わせています。
ヨガとストレッチの目的の違い
ストレッチの目的は、筋肉を弛緩させ柔軟性を高める身体の調整ですが、ヨガの最終目的は身体の調整ではありません。本来のヨガとは、忙しく動き回る心を静め、自分の内側にある、穏やかで永遠の存在に気が付くための、心の調整を目的としています。
ヨガの王道、ラージャヨガでは、瞑想により悟りの境地に達することができる、といわれていますが、瞑想に入る準備段階として、身体を整えるために作られたのが、ハタ・ヨガ、身体を動かすヨガです。ヨガの様々なポーズはハタ・ヨガから生み出され、このポーズの一部がストレッチの元になっています。
ヨガとストレッチのやり方の違い
ストレッチのやり方はシンプルで、筋肉が骨に付着している両端の部分(起始と停止)を引き離します。ストレッチにはいくつか種類がありますが、代表的なやり方はスタティック、バリスティックの2種類です。スタティックは、筋肉を伸ばした状態で2〜30秒キープすることで、筋肉の中腹(筋腹)を緩めます。バリスティックは軽い反動をつける動的なストレッチで、瞬間的に関節の可動域が広がりますが、反動が強すぎると怪我をする可能性があるため注意が必要です。ストレッチは、筋肉が骨に付着している両端の部分を、引き離せばよいため、解剖学を勉強した人であれば、誰でも行うことができるでしょう。
一方ヨガでは、流派による違いはあるものの、身体の形・ポーズの完成形よりも、呼吸を重視することが多くあります。ヨガの目的は心の調整であるため、心を整えるためのウォームアップとして、ヨガのポーズで体をほぐします。人の心は、体調や季節、時間帯によっても状態が変わるため、心を整えるためのポーズ、シークエンス(ポーズの順番)と呼吸の方法は、専門家であるヨガ講師の誘導に従うのが良いでしょう。
ヨガとストレッチの効果の違い
身体的な調整を目的としたストレッチに対し、心の調整を目的としたヨガは、メンタルヘルスに効果が高いことが特徴です。ヨガでは呼吸を重視していますが、その呼吸法は胸式呼吸を基本としたウジャイの呼吸、片鼻呼吸のアヌローマ・ヴィローマなど様々で、ヨガの内容により推奨される呼吸法も変わります。
感情の動きとそれに伴う呼吸は、脳の偏桃体で制御されていて、呼吸と感情は密接に関係しているため、何種類もあるヨガの呼吸と、身体を整えるヨガのポーズを上手に組み合わせることで、心が整っていきます。
ヨガのメリット
ヨガの一番のメリットは、心が整い、物事の本質を見極める力がつくことです。本来のヨガとは、「本質的な幸福」に気が付くための生き方そのものを指します。ヨガ哲学において、本質的な幸福とは、自分の内側にある、穏やかで普遍な存在を認識すること、といわれていて、現在一般的に普及している身体的な動きをメインとしたヨガも、最終的なゴールは同じです。
ヨガを深めるにつれて、身体的なヨガだけではなく、日常生活における意識の変化、瞑想や教典の勉強を続けることで、自分の殻を破り、物事の本質が見えるようになるでしょう。
ストレッチのメリット
ストレッチのメリットは、ヨガよりも手軽に、ピンポイントで筋肉にアプローチできる点です。難しいポーズをとらなくても、筋肉の仕組み・位置関係を勉強することで、誰でも自分でストレッチを考えることができます。
例えば、首回りのコリを解消したい場合は、肩甲骨周りの僧帽筋、後頭部から鎖骨にかけて付着している、胸鎖乳突筋を伸ばすことで、症状が和らぐこともあります。ストレッチは、筋トレと組み合わせることで、怪我の予防、疲労回復にもつながるため、筋トレで鍛える筋肉(主動筋)と、その反対側の筋肉(拮抗筋)をストレッチで伸ばすことは効果的です。
ヨガとストレッチ、どっちをやればいい?
ヨガとストレッチは、似ている部分はあるものの、その効果やメリットが異なります。ヨガやストレッチを何のためにやるのか、目的をしっかり確認し、適切なものを選びましょう。
ヨガの方が効果的な場合
ヨガの方が効果的な場合は、メンタル面での安定・成長を求めている時、またはヨガ哲学を深めたい場合です。身体的な動きのあるヨガの根本は、瞑想に入る準備です。瞑想に入るためには、心穏やかな状態でなければならず、ヨガのポーズと呼吸法は、その状態に導くために作られているため、ヨガが終わった後は、頭がすっきりとクリアな状態になります。
頭がクリアになると、精神的に安定し、ものごとの優先順位がはっきりと分かるため、仕事の効率も上がります。何か悩んでいる、自分に自信がない、一皮むけたい、などメンタル面での安定・成長を求めている場合は、ヨガの方が効果的です。
ストレッチの方が効果的な場合
ストレッチの方が効果的な場合は、身体の柔軟性を高め、筋パフォーマンスを向上したい場合です。身体の柔軟性が高まると、肩こり・首こりなどが解消されるのはもちろん、睡眠の質が向上する、血行が促進され基礎代謝が上がり、太りにくい体質になるなど、うれしい効果がたくさんあります。
また、解剖学の知識さえあれば、ヨガよりも手軽に、いつでもどこでもできるため、ヨガをやる時間がない時にもおすすめです。
まとめ
ヨガとストレッチは、似ているけれどまったく別物で、それぞれのメリットがあります。ヨガとストレッチの違いを正しく理解し、自身の身体と心の状態・目的に応じて上手に活用して、健康的な心と身体を手に入れましょう。
東京都を中心に活動するIHTA認定ヨガインストラクター。会社員としての経験を持ち、自身の健康を意識することからヨガを始める。身体だけでなく、心も健康にするヨガの魅力を知り、この魅力を広く伝えたいという思いからヨガインストラクターに転身。マインドを明るくするような朝ヨガ・リフレッシュ効果の高いフロー感のあるヨガを得意とする。