ヨガの代表的なシークエンス、太陽礼拝にも登場するチャトランガ。体幹や腕を使う力強いポーズのため、慣れないうちはチャトランガがうまくできない方も多いかもしれません。
今回は、チャトランガができない理由と、上手にポーズをとるコツ、太陽礼拝の中で、アップドッグにスムーズにつなげるための練習法を解説します。
ヨガのチャトランガとは?
チャトランガの正式名称は「チャトランガ・ダンダアーサナ」、「四肢で支える杖のポーズ」という意味で、プランクの状態から両ひじを90°折り曲げ、体を床すれすれまで近づけた状態を保ちます。かかとから後頭部までは、一直線の板のような状態を保ち、胸・お腹・太ももを同スピードで下げていくため、体の細かなコントロールが必要になる、中級者以上向けのポーズです。
チャトランガの効果
チャトランガは、体幹(胴体部分)と腕の筋肉を強く使うため、お腹と二の腕のひきしめに効果的です。とくに、二の腕の筋肉、上腕三頭筋は、日常生活のなかできたえにくい筋肉の1つでもあり、たるみやすい部分です。
チャトランガを練習することで、たるんでいた上半身が、キュッとひきしまり、美しいシルエットに変化していきます。
チャトランガのやり方
まず、プランクの状態をつくります。両手を肩の真下につき、足指でしっかりと床を押して体を安定させたら、お腹が下に落ちないように下腹を引きしめ、かかとから後頭部までを一直線に保ちましょう。
脇をしめ、ひじの角度が90°になるようにゆっくり曲げながら体を下ろしていき、床すれすれの位置で姿勢をキープします。
チャトランガができない理由
チャトランガは難易度が高いポーズのため、最初はできなくてあたり前です。1回の失敗であきらめず、なぜできないのか、できない時の対処法を知り、練習することで、かならず上達させることができますよ。
スムーズに下りられない
スムーズに下りられないときによくある原因は、手足の距離が近すぎるケースです。太陽礼拝では、アルダ・ウッタナーサナ(半分の前屈)から床に手をつき、足を後ろに引いてプランクに入りますが、ここで足を十分後ろに引かないとお尻が持ち上がり、まずプランクに入れません。このまま無理やり下りようとすると、スペースが足りずうまく下りられない、ということが起こります。
チャトランガには、手を肩の真下に置いたときに、後頭部からかかとまで、まっすぐ体を伸ばせる距離が必要なのです。一歩でたくさん足が引けないときは、一度ひざをついて足を引き、正しいプランクの状態を作り直しましょう。
腕で支える力が続かない
チャトランガが支えられない原因に、腕に頼りすぎているケースがあります。チャトランガでは、もちろん腕の筋肉を使いますが、もう一つ意識したいのが、「前鋸筋」、肩甲骨を外側にひらき、腕を前におしだす力を発揮する筋肉です。
前鋸筋を意識しないと、肩甲骨が寄り、首もすくむため、腕や肩への負担が大きくなり、支えられなくなってしまうのです。背中が丸くならない程度に肩甲骨を開き、両手でしっかりと床をおすことで、前鋸筋が働き、支える力が安定します。
お腹から下りてしまう
お腹から下りてしまう場合、お腹を引き上げる体幹(胴体部分)の筋肉が弱いケースが多くあります。チャトランガでも体幹をきたえることはできますが、もう一歩難易度の低い、クンプランクのポーズできたえるのもおすすめです。
プランクを2分間安定してとれるようになれば、チャトランガに十分な体幹がきたえられるでしょう。
プランク(クンバカーサナ)
チャトランガを上手にとるコツ
ここからは、チャトランガを、上手にとるコツをご紹介します。
手足の正しい位置を知る
まずは、手足の正しい位置を理解しましょう。両手は肩の真下、両足は、お尻が上がらず、後頭部からかかとまでが、一枚の板のようにまっすぐになるところです。
このポイントを把握しておけば、足の幅が狭いときに自分で気が付き、チャトランガに入る前に調整することができます。
前方向にスライドして下りる
ひじを90°折り曲げるには、体を真下ではなく、前方向にスライドさせながら下りていく必要があります。
つま先で床をけり出し、飛行機が着陸するように、徐々にコードを下げながら、鼻先を床に着陸させるように下りてみましょう。
脇をしめ、前鋸筋を使う
もう一つ、下りるときに意識したいのが、前鋸筋です。脇をしめ、両方の肩甲骨を引き離すイメージで床をしっかりと押し、前鋸筋を起動させましょう。
腕の筋肉だけでなく、たくさんの筋肉を同時につかうことで、安定感がグッと増すのです。ひじを外側に開かないように、腕を身体に沿わせ、しっかりと床を押しながら、後ろ方向に曲げていきます。
体幹の筋肉を使う
体幹とは、胴体部分の筋肉群のことで、お腹を引きしめた時に力を発揮します。呼吸をすべて吐ききったときの薄いお腹を意識すると、体に一本の芯が通ったような状態になり、チャトランガの安定感がアップします。
ただし、お腹を硬くしすぎると肩に力が入り、呼吸が止まってしまうため、「硬くする」という意識ではなく、「少し引きしめる」程度でOKです。
チャトランガからアップドッグへのつなげ方
太陽礼拝のなかで、多くの方が苦手意識をもつのが、チャトランガからアップドッグへの切り替えです。この部分は、太陽礼拝の中でも難易度の高いシークエンスなので、なんども練習することで習得できるものです。最初から完璧をめざすのではなく、負荷の少ない軽減法をとりいれながら、自分のペースで練習しましょう。
ひざつきのプランクからつなげる:難易度★★☆☆☆
まず試していただきたいのが、ひざをついたプランクから、八点のポーズ(アシュタンガナマスカーラ)を経由して、アップドッグにつなげる方法です。チャトランガは含まれませんが、体を安定して床に下ろす練習ができます。
八点のポーズでは、胸、両手、あご(難しい場合はひたい)が同時に床につくように、体幹を使い、お腹を引き締めながら上体を下ろします。その後、体を前方向にスライドさせるようにおなかを下ろし、足の甲も寝かせたら、両手で床を押しながらアップドッグに入りましょう。
八点のポーズ(アシュタンガナマスカーラ)
チャトランガから一度床へ下りる:難易度★★★☆☆
八点のポーズに慣れてきたら、チャトランガにチャレンジです。ひざをつかず、かかとから後頭部までを一直線に保ちながら、ひじを後ろ方向に曲げていきます。
そのまま一度床に下り、足の甲を寝かせ、あとは同じように上体を起こし、アップドッグにはいります。重力にまかせて、勢いよく床に下りてしまわないように、ゆっくりとした呼吸のリズムに合わせ、体をコントロールする練習をしましょう。
チャトランガからダイレクトでアップドッグへ:難易度★★★★★
一度床に下りる方法に慣れてきたら、いよいよダイレクトにポーズをつなげていきます。チャトランガで、体を床すれすれのところで支えている状態から、下りきることなく両腕で床を押して上体を起こします。
太ももとひざも浮かせたままの状態で、片足ずつ足の甲を寝かせ、アップドッグに入りましょう。ポーズの切り替えは呼吸の切り替えと同じリズムで。息を吸ってプランク、吐いてチャトランガ、吸ってアップドッグ、とつなげていきます。
まとめ
体の正確なコントロールが必要になるチャトランガ。難易度は高いですが、コツコツと練習を続けることで必ず上手にポーズがとれるようになります。チャトランガが上手にとれるようになると、ヨガへの集中力が増し、心地よくとれるポーズも増えていきます。あせらずじっくりと、チャトランガを極めてみましょう。
東京都を中心に活動するIHTA認定ヨガインストラクター。会社員としての経験を持ち、自身の健康を意識することからヨガを始める。身体だけでなく、心も健康にするヨガの魅力を知り、この魅力を広く伝えたいという思いからヨガインストラクターに転身。マインドを明るくするような朝ヨガ・リフレッシュ効果の高いフロー感のあるヨガを得意とする。