スピリチュアルなイメージがある瞑想ですが、疲労回復やストレス解消、感情の抑制や集中力の向上など、様々な効果が科学的にも証明されていて、今や瞑想は、とても身近で一般的なものになりつつあります。
本記事では、ヨガの瞑想とは何か、瞑想の効果と注意点、瞑想の具体的なやり方をご紹介します。
ヨガの瞑想とは?
ヨガの瞑想とは、「自分の内側に集中すること」です。ヨガ本来の目的は、様々な苦悩から解放された自由な存在に至ることであり、その目的を達成するための生き方そのものを「ヨガ」と呼びます。ヨガ哲学では、苦悩からの解放の鍵は自分自身の中にある、と教えていて、自分の本質を理解するための1つの方法が、瞑想なのです。
自分の内側に集中するとは?
自分の内側に集中する瞑想とは、頭を空っぽにすることではなく、心を1つの対象に集中させることです。集中させる対象は、心地の良い音や、心に描く映像、自分の呼吸などどんなものでも構いません。定めた対象から集中が外れ、雑念が生まれたら、それを認識し、心を引き戻す練習を根気よく繰り返しましょう。
心の動きを制御し、1つのものに集中し続けられるようになると、本当の自分に近づくことができます。人は、心=自分自身と認識してしまうことがありますが、本当の自分とは、そこから一歩引いて、心の動きをおさめることができる存在であるといいます。このことを理解し、腑に落ちた時に、人は心の動きに惑わされることがなくなり、様々な苦悩から解放されると、ヨガ哲学は教えているのです。
ヨガの瞑想の効果とは?
本来は本当の自分、本質的な幸福を理解するための手段であるヨガの瞑想ですが、その領域に至らないまでも、「1つのことに集中し、雑念を手放す」瞑想には、ストレスの多い現代人にとって、嬉しい効果がたくさんあります。
マインドコントロールが上手になる
ヨガの瞑想は、忙しく動き回る心を静め、1つの対象に集中する修練の要素を含むため、その練習を重ねる事で、感情の制御、マインドコントロールが上手になります。
一歩引いた目線で物事が見られるようになり、感情的に怒る、人に八つ当たりすることが減るため、人付き合いが上手になる、という相乗効果も期待できます。
集中力がアップする
瞑想は、頭を駆け巡る雑念を一旦手放し、「今のこの瞬間」だけに集中することで、頭の中がクリアになるため、脳の疲れが回復し、集中力がアップします。
スティーブ・ジョブズやビル・ゲイツも、瞑想を取り入れていたことで注目されましたが、社員の集中力を高め、仕事の効率化や生産性向上を目的に、瞑想を取り入れる企業も数多くみられます。
リラックスしてストレス解消
瞑想は、最も手軽にできるストレス解消法としても注目を集めています。集中を妨げる雑念は、過去の記憶や、まだ起きていない未来への不安から生まれるものが、ほとんどです。
瞑想は、雑念を手放す練習をしている状態であり、ストレスの元となる、負の感情から距離を置くことができるため、心をリラックスさせてくれます。
瞑想をするときの注意点
瞑想は如何に集中できるかが、とても重要になりますが、ただ座って目を閉じるだけで瞑想できる人は、ほとんどいないでしょう。ポイントを抑えておかなければ、瞑想が苦痛になってしまうケースもあるため、注意が必要です。
環境を整える
まず必要なのは、集中できる環境です。なるべく静かで、一人になれる場所。温度や臭いもとても重要です。暑すぎても寒すぎても、雑念が生まれやすいため、室温や着るものを工夫しましょう。また、自分の好きな香りを使っても、集中力を高める事ができます。
座って瞑想する場合は、長時間座っていても身体が痛くならないように、ヨガブロックや椅子を用意するのも良いでしょう。何にも我慢することなく、心地よく瞑想をするための環境を整えます。
自分の状態を整える
次に、自分の状態を整えます。1つ目は、心の状態。後悔や後ろめたさは、雑念の元になりやすい感情です。普段から、人に優しく、誠実に生きることで、雑念の種を減らすことができます。これは、マットの外で行う「ヨガ」(生き方)の1つでもあり、瞑想の準備として必要なことです。
2つ目は、身体の状態。瞑想はリラックスすることがポイントですが、リラックスするためには深い呼吸が不可欠です。そして、深い呼吸をするために必要なのが、正しい姿勢です。背骨が、本来の自然な湾曲を保つことが出来なければ、正しく呼吸をすることはできません。そこで役立つのが、ヨガのアーサナ(ポーズ)です。アーサナで身体を整え、姿勢を正すことで深い呼吸が通り、集中力が増していきます。
時間や結果にこだわらない
瞑想と聞くと、長い時間瞑想をしなければならない、と思う方もいますが、時間は問題ではありません。慣れないうちは、数分からでも良いので、継続することの方が重要です。また、今日はできなかった、明日はもっと集中しなくては、と結果にこだわることもおすすめしません。こだわりは焦りを生み、瞑想を続ける障害になるためです。
ヨガの教典には、「誠実に、熱心に、継続して、落ち着いて瞑想を練習することによって、誰でも瞑想状態に至ることが出来る」と書かれています。忙しい中、少しでも時間をとって瞑想をした、その事実を認め、まずはご自分を褒めてあげてください。モチベーションを保ち、根気よく練習しましょう。
ヨガの瞑想のやり方
では、注意点を踏まえ準備が整ったところで、ヨガの瞑想のやり方をご紹介します。
座を整える
まずは、座を整えます。瞑想に向いている座り方として、安楽座や蓮華座がありますが、初心者の方は背筋がまっすぐに伸びれば、正座や椅子でも構いません。両座骨に均等に体重をかけ、仙骨が床や座面に対し、垂直になるように骨盤を立てましょう。
目線を正面に向け、あごを引きすぎないようにします。二の腕を身体に引き寄せ、肩の力は抜きましょう。両手は膝か太ももに置き、掌を上に向けます(不安を感じれば、下向きでもOK)。
外からの刺激を減らす
次に、自分の内側に集中するために、外から入ってくる情報を減らします。不安でなければ目を閉じるか、半眼の状態で空中の一点を見つめましょう。どこにも焦点を合わさず、目から入る情報を減らします。
リラックスする
深く呼吸を通し、リラックスします。下半身はどっしりと安定させ、背筋を伸ばし、余分な力は抜いて。奥歯のかみしめを解き、喉の奥や眉間の間、顔の力は意識的に抜きましょう。苦しくなければ鼻呼吸に切り替え、深く呼吸を通します。
吸う呼吸よりも、吐く呼吸に意識を向ける事で、自律神経の1つ、心身を緩める副交感神経が優位となり、効果的にリラックスすることができます。
集中する
集中する対象を決め、心をそこに留めます。集中の対象はどんなものでも構いませんが、呼吸は自分の中の音、感覚として集中しやすいため、おすすめです。呼吸の音や通り道、呼吸と連動する自分の中の状態に、意識を向けるのも良いでしょう。他の考えが入り込んだときは、そのことをただ認めて、優しく手放すように、呼吸に意識を戻していきます。
意識的に行う瞑想はここまでです。修練を重ね、集中が継続し、呼吸に完全に没頭した状態に至ると、それまで別々に感じていた自分自身・考え(心)・集中の対象は、全て自分の本質から現れている、自分とそれ以外のものは、全て一つの根源に繋がっているものだ、と理解することができるといいます。この状態を深い瞑想状態「サマディ」と呼び、サマディでは自分と心、対象が一体となり、深いリラックス状態が生まれます。
参考書籍:
優しく学ぶヨガ哲学 ヨーガスートラ (向井田みお)
ヨーガバイブル (クリスティーナ・ブラウン)
まとめ
現代人の悩みの解消から、ヨガ本来の目的の達成までつながる瞑想。固定観念に縛られる事がなくなり、揺るがない自分を見つけることで、生きやすくなることもあるでしょう。
最も大切なのは、自分のペースで継続することです。少しの時間でも構いません、人生をより豊かなものにするために、日常に瞑想を取り入れてみましょう。
東京都を中心に活動するIHTA認定ヨガインストラクター。会社員としての経験を持ち、自身の健康を意識することからヨガを始める。身体だけでなく、心も健康にするヨガの魅力を知り、この魅力を広く伝えたいという思いからヨガインストラクターに転身。マインドを明るくするような朝ヨガ・リフレッシュ効果の高いフロー感のあるヨガを得意とする。