アクロバティックな動きにも見える鋤のポーズ。ヨガに慣れないうちは、むずかしさを感じるかもしれませんが、安全にポーズを深めるためのポイントをおさえ、安定させることで、心地よい体のゆるみと、心の安定を感じることができます。
今回は、鋤のポーズのやり方と効果、うまくできないときの練習方法をご紹介します。
ヨガの鋤のポーズとは?
鋤のポーズは、サンスクリット語で「ハラ・アーサナ」、「ハラ」とは「からすき」という牛や馬に引かせて、畑や田んぼを耕す農具のことです。ハラ・アーサナは、ポーズの完成形が、その「からすき」に似ていることが、名前の由来とされています。
鋤のポーズのやり方
まずは、鋤のポーズの安全なやり方を見ていきましょう。
両足を浮かせ、手を腰にそえる
ひざを立てた仰向けから、両手をひざの後ろにまわし、両ひざを胸に寄せておきます。ひざを曲げたまま、つま先を頭の先に移動させると、お尻が浮いてくるので、浮いたお尻に両手をそえましょう。両手をお尻から腰にじりじりと移動させ、腰をしっかりと支えたら、肩の上に腰がくるまで下半身をもち上げて。
足を天井方向に上げる
喉の奥を軽くしめ、あごを引き、安定していたら、両あしを天井方向に伸ばしましょう。目線はおへそに一点集中させ、首を動かさないように注意して。体幹を使い、しっかりと足を上方向に引きあげた、肩立ちのポーズ(サーランバサルヴァーンガーサナ)をはさむことで、ゆっくりと段階を踏んで鋤のポーズに入ることができます。
足先を床に下ろす
肩立ちのポーズを安定してキープできるようになったら、いよいよ鋤のポーズにチャレンジです。ひざを伸ばしたまま、ゆっくりとつま先を頭のさきに伸ばし、届くようであれば床につけてみましょう。余裕があれば、両手を腰からはなして、体の後ろでくみ、腕でしっかりと床を押します。3呼吸ほどキープしたら、ポーズの解放もていねいに。ひざを折り曲げ、徐々に背中を床につき、ひざを立てた仰向けにもどりましょう。首をやさしく左右に振り、緊張をほどいて。深い呼吸をとおし、そのままシャバーサナにはいると、自然と体がほぐれる心地よさを感じることができますよ。
鋤のポーズの効果
鋤のポーズは、頭を心臓より下にする逆手のポーズのひとつです。とどこおりやすい体液のめぐりをよくすることで、体の調子を整えると同時に、ポーズの解放後には深いリラックスを感じることができるため、心を整える効果もバツグンです。
血行促進
鋤のポーズは、足を高くすることで、普段足元にとどまりやすい、血液やリンパ液など体液の流れを、正常に戻してくれる効果があります。
血のめぐりがよくなることで、新鮮な酸素や栄養が体のすみずみまで行きわたり、だるさや疲労が回復し、頭もシャキッとするため、集中力の高まりを感じることができるでしょう。また、血行・リンパの流れがよくなることで、むくみの解消や、解毒・デトックス効果も期待ができます。
内臓が元気に!
鋤のポーズで足を高く上げることで、内臓が正しい位置に収まり、働きがよくなります。特に腸は、不良姿勢や骨盤の歪み、筋肉の衰えなどで下がりやすく、下痢や便秘、ポッコリおなかの原因にも。腸の位置が正しく収まると、下腹がスッキリし、おなかの調子がよくなります。
内臓が元気になり、本来の機能を取りもどすと、生活と体のリズムもあってくるため、寝ている間にしっかりと栄養を消化・吸収し、朝おきたときに自然に排出する、正しいリズムに整っていくでしょう。
ストレス解消
鋤のポーズは、首の後ろがよくストレッチされ、リラックスするための神経、副交感神経を優位にしてくれます。
自律神経失調症は、首のコリを解消することで、症状を和らげることができる、という研究結果がたくさんあるように、首のコリと自律神経の乱れは深く関係しているのです。首をやわらかくすることで、自律神経のバランスが整い、上手にリラックスできるようになります。
鋤のポーズができないときは
鋤のポーズでなかなか足が上がらない、と悩んでいませんか?鋤のポーズで足を上げるには、背中をやわらかく保つことが必要です。また、タオルやヨガブロックを使うことで、ポーズの難易度を下げることもできるため、安全にポーズを練習するために、このような道具はどんどん使いましょう。
タオル・ヨガブロックでポーズを軽減
足が上がらないときは、背中に丸めたタオルをはさみましょう。タオルがお尻をあげるためのサポートをしてくれるため、足を上げやすくなります。
また、足を頭の先に下ろすときに苦しさを感じる場合は、ヨガブロックを頭の先に置いておき、そこに足先を乗せてみて。道具を使うことは、恥ずかしいことではありません。安全にポーズをとるためにも、タオルやブロックは積極的に使い、ポーズを心地よいものにしましょう。
背中をよく動かしておく
鋤のポーズで、足先を頭の先に伸ばすためには、背中の柔軟性が必要ですので、背中をよく動かすアーサナで体を整えると、鋤のポーズに入りやすくなります。
まずはキャット&カウで背中をやわらかく動かし、扇のポーズで肩甲骨まわりをストレッチしましょう。更に、バッタのポーズでしっかりと背中を動かしてから鋤のポーズに入ると、体を安定させることができます。
キャット&カウ
扇のポーズ
バッタのポーズ
鋤のポーズの注意点
鋤のポーズは、首に負担がかかりやすい体勢でもあるため、注意点を把握しておかなければ、ケガにつながることも。安全にポーズをとるためのポイントをおさえて、練習しましょう。
首を動かさない
一番たいせつなポイントは、ポーズの最中に首を動かさないことです。目線はおへその一点をみつめ、バランスをくずさないように集中してください。
ポーズに自信がないときなどは、インストラクターを確認したくなりますが、そんなときは、かならず背中を床についた状態までもどってから確認し、もう一度ポーズに入りましょう。
鋤のポーズを避けたほうが良いときは?
首を痛めているときは、鋤のポーズは絶対に避けてください。ヨガでは、痛みや違和感をがまんしてムリにポーズをとっても、よい効果は得られません。
逆に、首に負担がかかり、悪化する可能性もあるため、注意が必要です。また、生理中も、体の自然な排出を妨げてしまうため、鋤のポーズのような、頭を心臓よりも下にする、逆転のポーズはお休みしましょう。
まとめ
ポイントをおさえ、安全に深めることで、心にも体にも良い効果がたくさんある鋤のポーズ。できないときは、たくさん道具を使い、自分の体に合わせてポーズを深めましょう。最初は苦しさを感じるかもしれませんが、鋤のポーズならではの心地よさを感じられるようになれば、自分を整えてくれる、強い味方になってくれるでしょう。
東京都を中心に活動するIHTA認定ヨガインストラクター。会社員としての経験を持ち、自身の健康を意識することからヨガを始める。身体だけでなく、心も健康にするヨガの魅力を知り、この魅力を広く伝えたいという思いからヨガインストラクターに転身。マインドを明るくするような朝ヨガ・リフレッシュ効果の高いフロー感のあるヨガを得意とする。