高難易度のヨガポーズが印象的なアシュタンガヨガですが、アシュタンガヨガにも難易度別に種類があり、精力的に体を動かすことに抵抗がなければ、初心者でもチャレンジすることができます。
本記事では、アシュタンガヨガとは何なのか、その効果や特徴、ポーズの順番、アシュタンガヨガはどんな人におすすめかをご紹介します。
アシュタンガヨガとは?
アシュタンガヨガは2種類の意味を持ちます。一つは、ヨガ哲学としてのアシュタンガヨガ、もう一つは、私たちが普段ヨガスタジオなどで実践しているアシュタンガヨガです。一般的に普及しているアシュタンガヨガは、ヨガ哲学におけるアシュタンガヨガの思想をベースとしていますが、この2つは区別して理解する必要があります。
哲学としてのアシュタンガヨガ
ヨガ哲学における最終的なゴールは、「本質的な幸福」であり、本来ヨガとは、そこに至るまでの生き方・行法を指します。ヨガ哲学におけるアシュタンガヨガの和訳は「ヨガ八支則」であり、ヨガのゴールに至るまでの、段階を踏んだ8つの方法のことなのです。
修練を重ね、ヨガ八支則の8つ目、サマディの体験を通し、人は内なる本質的な幸福に気が付くことができる、とヨガ哲学は教えます。
ヨガ八支則
- 日常の中でしてはいけないこと(ヤマ)
- 日常の中ですべきこと(ニヤマ)
- 座法(アーサナ)
- 調気法(プラーナヤーマ)
- 感覚の統制(プラティヤハーラ)
- 集中(ダーラナ)
- 瞑想(ディアナ)
- 悟り(サマディ)
一般的に実践されているアシュタンガヨガ
現在、ヨガスタジオなどで実施されているアシュタンガヨガは、アシュタンガ・ヴィンヤサ・ヨガのことを指し、ヨガ哲学におけるアシュタンガヨガ(ヨガ八支則)の思想をベースに作られた、近代ヨガの1つです。
呼吸に合わせて動き続けるため運動量が多く、アメリカでヨガブームを引き起こしたパワーヨガの土台でもあります。
アシュタンガヨガのルール
アシュタンガヨガはルールが多く、最初は戸惑うかもしれませんが、代表的なルールから徐々に覚えていけば問題ありません。では、代表的な4つのルールをご紹介します。
ポーズの順番
アシュタンガヨガのシークエンス(ポーズの順序)は、プライマリーシリーズと呼ばれる初級向けから、アドバンスDシリーズと呼ばれる上級者向けまで6種類あり、それぞれポーズの種類・順番が決まっています。上級者向けになるほど、難易度の高いポーズに流れるように切り替える筋力と柔軟性が必要です。まずは、プライマリーシリーズからチャレンジしましょう。
胸式呼吸
アシュタンガヨガは胸を使った胸式呼吸、ウジャイ呼吸を基本とします。ウジャイ呼吸は、下腹部を常に引き締め、胸を意識して行う呼吸です。交感神経を優位な状態に保ち、集中力や体幹・バランス力がアップします。
ポーズ毎の視点
アシュタンガヨガはポーズ毎の視点(ドリスティ)が決められています。視点を定めることで首の後ろ、頚椎のラインが安定し、難易度の高いポーズでも呼吸を通しやすくするメリットがあります。身体だけでなく視点も含めてポーズをキープしましょう。
身体の締め付け
アシュタンガヨガでは、身体の締め付け(バンダ)を重視していて、エネルギーが身体から漏れ出すのを防ぎ、呼吸とポーズを安定させます。特に重要なのが骨盤底筋群の締め付け(ムーラバンダ)と、丹田の締め付け(ウディアナバンダ)で、ウジャイ呼吸ではこの2つを使い、下腹部を引き締めながら息を吐き切ります。
アシュタンガヨガの効果やメリット
アシュタンガヨガは難易度の高いヨガに分類されますが、修練を続けるうちに確実に上達します。また、難易度の高いヨガだからこそ、心身共に得られるメリットが多くあります。
全身の引き締め効果
各ポーズのキープ時間は、長いもので5呼吸程度と短く、流れるように動き続けるアシュタンガヨガは、運動量が多いのが特徴です。
ポーズも固定されており、全身をくまなくストレッチ・トレーニングできるため、アシュタンガヨガを習慣化すると全身が引き締まり、筋肉量がアップします。
ストレス解消効果
アシュタンガヨガは、冬場の常温ヨガでも汗をかくほど動くのが特徴です。人は、運動などによる体温の上昇で汗をかくと、副交感神経を優位にするホルモン、セロトニンを分泌します。副交感神経が優位になることで、身体はリラックス状態となり、ストレスが解消されます。
精神力・集中力がアップする
アシュタンガヨガの動きに慣れると、自分の呼吸と身体の動きのみに集中することができます。瞑想の第一段階は集中すること(ヨガ八支則のダーラナ)ですが、アシュタンガヨガは、「動く瞑想」と呼ばれるほど集中力が鍛えられます。
また、難易度の高いアシュタンガヨガにチャレンジし、継続することで、ストレスに負けない精神力を鍛えることができるでしょう。
アシュタンガヨガはどんな人におすすめ?
アシュタンガヨガは運動量が多いヨガのため、精力的に体を動かし運動をしたい方におすすめです。
- 身体全体を引き締めたい人
- 汗をかき、ストレスを解消したい人
- 精神力・集中力を鍛えたい人
アシュタンガヨガのポーズと順番
アシュタンガヨガの初心者向けシークエンス(ポーズの順番)、ハーフプライマリーをご紹介します。太陽礼拝から始まり、立位のポーズ、座位のポーズ、頭を心臓より低くする逆転のポーズ、蓮華座の順で進みます。
ハーフプライマリーのポーズと順番
太陽礼拝
- スーリヤ・ナマスカラA(太陽礼拝A)
- スーリヤ・ナマスカラB(太陽礼拝B)
立位のポーズ
- パーダングシュタ・アサナ(親指をつかんだ立位前屈のポーズ)
- パーダハスタ・アサナ(前腕をほぐす立位前屈のポーズ)
- ウッティタ・トリコナ・アサナ(三角のポーズ)
- パリブリッタ・トリコナ・アサナ(ねじった三角のポーズ)
- ウッティタ・パールシュヴァコナ・アサナ(体側を伸ばすポーズ)
- パリブリッタ・パールシュヴァコナ・アサナ(ねじった体側を伸ばすポーズ)
- プラサリータ・パードッターナ・アサナ(ピラミッドのポーズ)
- パールシュヴォッターナ・アサナ(脇腹を強く伸ばすポーズ)
- ウッティタ・ハスタ・パダングシュタ・アサナ(一本足のポーズ)
- アルダ・バッダ・パドモッタナ・アサナ(半蓮華座を組んだ立位前屈のポーズ)
- ウトゥカタ・アサナ(椅子のポーズ)
- ヴィーラバドラ・アサナ1(戦士のポーズ1)
- ヴィーラバドラ・アサナ2(戦士のポーズ2)
座位のポーズ
- ダンダ・アサナ(長座)
- パスチモッターナ・アサナ(長座前屈)
- プールヴォッターナ・アサナ(上向きのプランクポーズ)
- アルダ・バッダ・パドマ・パスチモッターナ・アサナ(半蓮華座を組んだ片脚前屈のポーズ)
- トリアンガムカエーカパーダ・パスチモッターナ・アサナ(片脚を曲げた前屈のポーズ)
- ジャーヌ・シルシャ・アサナ(片足前屈のポーズ)
- マリーチ・アサナ(賢者マリーチのポーズ)
- ナーヴァ・アサナ(船のポーズ)
逆転のポーズ
- ウルドゥヴァ・ダヌラ・アサナ(上向き弓のポーズ)
- チャクラ・アサナ(車輪のポーズ)
- パスチモッターナ・アサナ(長座前屈)
- サルヴァンガ・アサナ(肩立ちのポーズ)
- ハラ・アサナ(鋤のポーズ)
- カルナ・ピーダー・アサナ(耳を膝で挟むポーズ)
- ウルドゥヴァ・パドマ・アサナ(上向きの蓮華座)
- ピンダ・アサナ(胎児のポーズ)
- パドマ・マツヤ・アサナ(蓮華座の魚のポーズ)
- ウッターナ・パーダ・アサナ(脚を強く伸ばすポーズ)
- シルシャ・アサナ(ヘッドスタンド)
- ウルドゥバ・ダンダ・アサナ(上向きの杖のポーズ)
蓮華座
- パッダ・パドマ・アサナ(縛った蓮華座)
- パドマ・アサナ(蓮華座)
- ウト・プルティ(天秤のポーズ)
まとめ
伝統的なヨガ哲学をベースとしたアシュタンガヨガを修練することで、引き締まった肉体を手に入れ、苦難に負けない精神力を鍛え上げることができます。
流れるような動きと、難易度の高いポーズに、最初は苦労するかもしれませんが、自分のペースで続けることが大切です。少しずつ段階を踏んで成長する自分を褒めながら、アシュタンガヨガを習慣化しましょう。
東京都を中心に活動するIHTA認定ヨガインストラクター。会社員としての経験を持ち、自身の健康を意識することからヨガを始める。身体だけでなく、心も健康にするヨガの魅力を知り、この魅力を広く伝えたいという思いからヨガインストラクターに転身。マインドを明るくするような朝ヨガ・リフレッシュ効果の高いフロー感のあるヨガを得意とする。